I will ask you.

Why do people fear dying and does it desire to live?』

 

 

I will answer.

That is because it fears getting to know an unknown domain.』

 

 

暗闇の中で人は暗いcry道を喰らい未知を走り泣き喚き吼えて無き叫び亡き悶えてhowl吼えて眼下をgun下を覗き除き恐怖を祓いたいのに絡み血が凍るcall払いたいcalamity絡み血が纏わり付いて人を斬る人をkill血汁がどろどろdrowどろ血Juiceが止まらなくて雄大なyou dieな大地でしくsickしく死苦―――――

 

 

つまり、人は―――――

生まれた時から、狂っているのです。

 

 

母親の胎より生まれた赤ん坊。何故泣くのでしょう?

それは、自分が生まれてしまったから。

 

 

赤子は知っているのです。

生まれた瞬間から、自分が狂ってしまうということが。

 

 

だから、泣く。それは祝福ではありません。

 

 

憎悪、なのです。

 

 

 

 

《晩朝》

 

 

 

 

「―――までは、140円になります」

 

 

バスのアナウンスの放送を聴いて、私は眼を醒ます。

街が近い。私は、バスを降りる準備をすることにする。最も、荷物なんて殆んど持ってないようなものだけれど。

いきなりの同居人、Bアグモン。私なりの考えだが、やはり何か便利な生活道具はあった方が良いのであろう。一緒に住むからには、ストレスの溜まらない快適な生活が送れる環境を作る必要がある。

 

 

Bアグモンには、お留守番してもらうことにした。

昨夜聞いた彼の話では、彼ら化け物たる類―――『デジタルモンスター(略称:デジモン)』は、世界中を探せばわんさか居るものらしい。しかし、テレビや雑誌で一切報道されないことや、そのような単語を使う人を見たこと無いことを考えれば―――彼らデジモンが、一般市民に知られている確率は極めて低い。

まぁ、何にせよ市民を愕かせてしまうと……警察騒動になりかねないとは思う。或いは、動物保護団体とかも出てくる恐れがある。そんなことは御免蒙りたいところなので、私一人で行くことにした。無論、学校は休む、という形になってしまうのだが。

 

 

我が家から街までは、行きはバスで行くことが出来る。家の近くに、2時間に1回バスが来るバス停があるのだ。徒歩で40分だから……大体、15分程度の走行時間。

しかし、付近の町ではそうそう品揃えの良好な店と言うのは少ない。それに、商店街の店のおば様(特にお豆腐屋さん、八百屋さん等)の方々とは結構な顔見知り。絶対に口には出していえないが、お客さんと2〜3人して

 

 

『あんらまぁ、美音ちゃん、また一人でお買い物かしらぁ?相変わらずえんらいわねぇ〜〜〜!!』

 

 

『ウチの清美も見習わせたいわぁ〜〜〜!!』

 

 

…………鬱陶しい。鬱陶し過ぎる!

 

何時もなら耐えられるが、今日は少し耐えれそうに無い。統計的判断だが、それはある一定の感情の具合、精神的疲労感の溜まり具合によるものであり、今の私は具体的に言えば、何時もより『心身共に疲れている』状態であるからだ。今あの場に出てしまえば私は倒れてしまうかもしれない。それだけは御免蒙りたい。

 

 

そんなこんなの理由で。今日は、バスで30分の―――2つ離れた街に行くことにした。その町にある駅前デパートの品揃えは良く、尚且つお値段も比較的押さえ込んでいる。交通面では少々手間が掛かるが、大量の買出しには持って来い、なのだ。

 

 

丁度、バスのドアが開いた。目的地であることを確認し、運賃代を支払ってから――――私は、バスを降りた。深呼吸すると、口内に排気ガス等から来る不味い空気の味が染み込んだ様に感じた。

 

 

 

 

Re/call 〜Emerald〜

   第参話 “疾走”

 

 

 

 

どちらかといえば、気の向くままに進むと道に迷いやすい方だ。私は、しっかりとバス停前に設置されている案内図の看板を、目で読み取り脳で記憶する。

バス停から目的地のデパートまでは……目算したところで、3〜4分の距離だ。ルートを、完全に覚え込む。

 

 

そして、私は腰に付けた『それ』を取り出し、画面を見つめる。時計モード、とでも言うべきか。現時刻が、一分一秒の狂いも無く表示されている。電波システムとやらでも使っているのであろうか?最新のテクノロジーとやらは、私の考えているレベルよりも更に凄いのかも知れない。

 

 

『それ』は、小形の携帯ゲーム、というモノに見える。

ガンメタリックの流線型ボディには、中央に画面、その下にゴム製らしき黒いボタンが、3つ付いている。裏側には、ご丁寧にクリップ状になっていた。振ると、ゴツ、ゴツと小さな機械音。まぁ、機械に関する知識は皆無に近いこの私だ、内部の仕組みはどの道解らないであろう。

 

 

『それは“デジヴァイス”だ。これからは………何時も持っていてくれ。』

 

 

デジヴァイス。変な名前だ、と思った。

 

 

昨日…Bアグモンは、話の途中で一旦家を出た。焦りながら『忘れ物がある』と言っていたので、Bアグモンだけでも大丈夫だと判断した私は、家で待つことにした。そして、一時間程度経過したところでBグモンが戻って来……忘れ物、デジヴァイスを私に託した。

 

 

詳しい説明が無かったが、Bアグモンによれば『いざ、と言うときに理解る』らしい。私は、スカートのウェスト部分にクリップを挟んで、常備することにした。

 

 

今のところ、何も気にすることは無さそうだ。

やはり、デジモンと言えど……このような街中に出てくるはずも無い。人々が無知である事が、何よりの証拠だ。

私は、足早にデパートへと向かった。

 

 

 

 

《昼》

 

 

 

 

「では、ごゆっくりどうぞ」

 

 

立派なお髭のウェイターさんが微笑み礼をして去ってから、私は注文した料理を食べ始める。湯気を吸うだけで食欲をそそられるのは、『美味い』料理である充分な証拠だ。

 

 

異国の料理―――『ナシゴレン』を食べながら、私はお財布の中身を確認する。現金15438円。Bアグモンのためのお買い物に、実に1万円近くを消費した。お布団とマット、掛け布団や枕に加え―――タオル数枚、バスタオル2枚。そしてBアグモン専用マグカップに、牛のお肉1キロ分。そして、それらを纏めて宅配に出し――――丁度、お昼時になったので昼食を食べているのだ。

 

 

それにしても、異国料理も美味いものだ。

日本のよりも細長いお米に、刻んだお野菜とお肉を混ぜ炒め、更にその上にどどんと目玉焼きが乗せてある。味は、炒飯とは違い、かなり辛い。そして、何よりも独特の風味が出ていて実に美味い。食べ終わった後、デザートに『タピオカミルクプリン』を頂き――――私は、店を後にした。何だか、異国に行った様な気分だった。

 

 

 

 

 

さて、と。

買い物は終わったが、この時間帯に戻るというのは何だか勿体無い。寄り道の一つや二つはしたいものだ。まぁ、此処まで来て何だ。楽しそうなことを考えてみよう。

 

 

楽しめそうな選択肢の例。

 

 

壱:お花売り場に行ってお花を見ようか。

弐:お洋服売り場で、新しいお洋服を試着しようか。

参:玩具屋へ行って、この前クラスの男子達が欲しいと喚いていた『ますたーぐれーどのふぁっつ』だの『けーにっひうるふ』だの…………よく分からないが、そこら辺のものでも試しに買ってみようか。

 

 

…………。

壱は正直、Bアグモンの興味をそそる事は出来ないであろう、と断言できそうだ。弐は、試着しても買うかどうかはわからないし、そもそも今あるお洋服だけでも充分満足している。

だとすると、結論として挙げるならば参か。新しいことへの挑戦だし、もしかしたらBアグモンが遊ぶかもしれないし。

そんなことを考えていると――――

 

 

『ずびりっ!!』

 

 

背中に、電撃が走ったような痛み。そして、後ほどから襲ってくる重々とした衝撃。私は、うつぶせに倒れそうになる体を、片足を一歩踏み出すことで抑える。体は、斜めに傾いた所で止まった。

背後を睨む。

 

 

「やっほぉ、みおちゃぁん!お久しぶりでぇす♪」

 

 

背後に居た人は、見覚えのある姿だ。視認する。

服装は、袖無しのシャツの上に半袖の前開きジャケット、そしてスパッツ。髪は短い茶髪で、目は綺麗な紺色。

にへら、とした笑みを浮かべてチョップをしたようなポーズ。その手の位置は、私の背中と同一の高さにあった。

 

 

「……いきなり何するんですか、璃麻さん」

 

 

私は、この暴力的な挨拶をしてきた、無駄に元気一杯・一歳年上の先輩―――――坂崎 璃麻(さかざき りお)さんを、皮肉さたっぷりに睨みつけながら、背中を擦る。チョップの威力は相当高かったらしく、背中はジンジンとした痛みに見舞われていた。というか、何でこの人は今こうして町を歩いているのだろうか。学校は休んでいるのか?まぁ、事情でもあるのであろう。気にしてもしょうがない。

 

 

「やだなぁ、僕とみおちゃんのスキンシップはいっつもこれじゃぁないですかぁ!」

 

 

この女郎め、勝手に決め付けやがった―――

 

 

…………まぁ、私なんかが取り乱したところでどうにもならないわけなので。乱れそうな心を強制的に静めて、彼女への警戒を怠らずに――――落ち着かせるため、深呼吸を繰り返す。彼女は、そんな私を見て。太陽のように明るく、笑うのであった。

 

 

 

 

「にしてもぉ、みおちゃんがこーんな広い町に来るなんて珍しいですよねぇ……お買い物ですかぁ?」

 

 

「はい。ですが、必要なお買い物は終わったので……お花を見ようかお洋服を試着しようか、それとも新発売されたらしい男子向け玩具を試しに買ってみようかどうか……考えていたところです。」

 

 

「ええっ!?新発売ってMGのあれっスかぁ!?そこらの類ってニッパーとか鑢とかピンセットとかデザインナイフぐらい無いと大変ですよぉ!?作るのにもうんと時間掛かるしぃ……」

 

 

盲点だ。

男子玩具は全て縫いぐるみやこけしのような……完成品とばかり思っていた。璃麻さんの挙げた言葉……ニッパー、デザインナイフと言うのが何なのかわからない。鑢とピンセットは知っている。鑢はお爺様が木を加工する時に使うし、ピンセットはお婆様が、私が蜂に刺された時に……その針を抜くために使っていたのを覚えている。

しかし、この時点で。Bアグモンがあれらを持つには……相当苦労するのではないだろうか?よく分からないが、きっとそのニッパーやデザインナイフも持ち難いに違いない。

 

 

「あぁ、何なら僕が色々教えましょうかぁ?」

 

 

璃麻さんが、私にそう問いかける。

悪くない提案だ。初心者というものは経験者のアドバイスを経ることで成長できるのだ。璃麻さんが男子向け玩具を作るかどうかは謎に包まれているが、この人のことだ。詳しいに違いない。

 

 

私が作って、Bアグモンが弄る。

 

 

成る程。中々の良案ではないか。

私は、『お願いします』と答えようとした――――

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

背後に来る、悪寒。体中が、危険信号を発する。

 

 

一昨日の感覚。突如として湧き上がる吐き気。

背骨ごと、背中をごっそりと『持って』行かれる。心臓に、冷たく『熱』された刃が突き刺さる。体の水分という水分が、『掻き混ぜ』られる。脳が、片っ端から『握り』潰される。そんなイメージを掻き立てる、酷く気色悪い悪寒。

全く同じ。私を蝕む悪寒。

 

 

「…………っ」

 

 

「うゆ?どぉしたんですかぁ?」

 

 

私は、込み上げてくる吐き気から来る嘔吐を、一歩手前の段階で止めることに成功した。その場で思わず、しゃがみ込む。璃麻さんが心配そうな声で、私の背中を擦るのが分かった。

大きく息を吸い、大きく息を吐く。しゃがみ込んでるから大した量を吸えるワケでもないし、そもそも二酸化炭素など排気ガスが入り混じった汚れた空気だ。それでも、私の体を落ち着かせるには充分だった。

 

 

私は、すくり、と立ち上がり……璃麻さんに向き直った。璃麻さんは、予想通り心配そうな顔をしていてくれた。

 

 

「すみません……急用が出来ました。このまま、帰らせていただきます。」

 

 

……『場所』は理解る。どうやら、デジモンのテイマーになるとこのような不思議な力が身に付くようだ(確認した訳ではない。あくまで私一個人の統計的な判断だが)。履いていた靴の紐をしっかりと締めて、深呼吸をする。吐き気は、完全に抜けていた。

 

 

「…………では、またお会いしましょう。」

 

 

「はい……気を付けて下さいねぇ」

 

 

…………何故、『気を付けて下さい』なのだろうか。一瞬だけ、疑惑が浮かんだ。いや、考えていても仕方の無い事か。私は、バス停まで走って向かった。自分でも驚くほど、素早く走れた。

 

 

 

 

《暮刻前》

 

 

 

 

「んにー……追わなくて、よかったのかなー?」

 

 

いつの間にか、璃麻の隣に一人の青年が立っていた。

金髪に碧眼の瞳、そして中性的な美しい顔付き。それに加え、すらりとした体系は――――『美青年』といった言葉が、非常によく似合う。その美顔には、緩やかな笑みが浮かんでいた。

 

 

「あぁ……来てたんですかぁ?」

 

 

璃麻は、軽く欠伸をしてから、青年に目をやる。いつの間にか青年が隣に居ることに対して、驚きは無いようだ。振り向き、まるで親友に話しかけるかのようなあどけない笑みを浮かべる。

 

 

「はろー♪えぇーっと、みっしょん、なんだけどねぇー…。あの子にお任せしちゃっていいのかなー?」

 

 

肩を竦め、曖昧な発音の英単語を混ぜながら呟く青年。その目は、走り遠ざかっていく美音の姿を見据えていた。

 

 

「一応、いざって時のために看視兼ねてコマンドラモンを追尾させてるんでぇ、問題は無いと思いますぅ。」

 

 

「わーおぅ……あくてぃぶな対応だねー♪」

 

 

おどけた反応を見せる青年。まるで、子供と接することを生業とする保育士のような、緩やかな笑顔。そして喋り方。それを見た璃麻は苦笑しながら、空を見上げた。晴れ晴れとしていた昼の空は、いつの間にか、灰色の雲に覆われていた。

 

 

「それじゃー……ゼノくんはー、本部にみっしょんこんぷりーと、って伝えておこーかな♪」

 

 

青年は、くるりと踵を返して……静かに、歩き出す。その言葉とその行動。どうやら、ゼノ、と言うのは青年自身のことを示しているようだ。璃麻もまた、踵を返して……青年、ゼノの後を追う。そして、一言……呟いた。

 

 

「大丈夫ですよぉ」

 

 

一瞬、だった。

その笑顔と、その和やかな喋り方は――――

 

 

一瞬で、冷たく鋭利な喋り方に。

 

冷酷な笑みに、変貌する。

 

 

「どんな結果でも。出る芽は所詮……抉るまでですから。」

 

 

 

 

《異刻》

 

 

 

 

Bアグモンの聞いた話の内容を思い出す。

デジモンの出現するのは人の負の念が強い場所が多いらしい。負の念、と言うのは恐らく……怒りや憎しみ、悲しみといったもの……なのであろう。何となくだが、私にも理解る。

 

 

悪寒は、家に近づくと一層強くなった。

予想だが。恐らくは、またあの森林の中に何かが潜んでいる。

私は、駆け足で家に戻る。草を踏む音。鳥や虫の鳴き声。木が揺れる音。水の流れる音。息を吸う音。息を吐く音。全てが、頭の中にクリアに伝わってくる。

 

 

成る程。

戦うには、持って来いの状態と言う訳か。

 

 

「美音!」

 

 

玄関前では、Bアグモンが私のことを待っていた。どうやら、彼も何かを感じ取ったらしい。目配せすると、Bアグモンはしっかりと頷いた。ちょっとした身支度を済まし、私達は悪寒の『発信源』に向かって走り出す。

 

 

「何処だかわかるか?!」

 

 

「はい。何と無く、ですけどね!」

 

 

体が、探知機とかいう機械の状態になっているのだろう。手に取るように、自分の周り。自分の状態。Bアグモンの状態。そして、敵の方角が理解る。強いて言うならば、将棋や囲碁のような――――その場全体が、見えている感じだ。

 

 

ぼうぼうに茂った雑草を踏み蹴りながら、森の奥へと走る。Bアグモンも、私と同じペースで追いついている。走りながら、周りを取り巻く空気がどんどん濃密になっていくのがわかった。嗅覚に混ざってくるのは……濃厚な、鉄の臭い。つまりは血の臭い。

胸糞悪い。胸の中に、何処からとも無くどうしようもない怒りが込み上げるのが分かった。この怒りが何なのかは解らないが、考えようによっては好都合だ。あくまで、統計的判断に過ぎないのだけれど。

 

 

この怒りを、Bアグモンを通して敵にぶつければいいだけのことだ。






やがて、血の臭いに加えて……焦げる臭いが、鼻を刺激する。敵は、すぐ目の前にいるようだ。私は、Bアグモンにもう一度視線を送る。すると、Bアグモンからも視線が送られてきた。


戦える。



私達は、一気に駆け抜けた。
そして―――――『それ』と、対峙する。




「ぐふふっ……新しい餌だぁ…………」



戦場は、周りの木々が焦土と化した沼地。



敵は、焔を纏ったのろりと喋る巨大な猪だった。





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